仲謀も花も出てこない、仲謀軍のおはなしです。
サブキャラすら出て来ねえ、つかどんだけモブ好きなんだろう私。
むしろ揚州のモブになりたい勢いです。
そして花ちゃんの愛らしさと仲謀のスットコぶりを物かげからこっそり眺めてたのしみたい(討たれよ)。
裏的な意味ではなく年齢層が高いです(笑)。
長すぎるので、前後に分けています。
あまりバランスのよくない前後編ですが、楽しんでいただけると幸いです。
つづきからどうぞ~♪
サブキャラすら出て来ねえ、つかどんだけモブ好きなんだろう私。
むしろ揚州のモブになりたい勢いです。
そして花ちゃんの愛らしさと仲謀のスットコぶりを物かげからこっそり眺めてたのしみたい(討たれよ)。
裏的な意味ではなく年齢層が高いです(笑)。
長すぎるので、前後に分けています。
あまりバランスのよくない前後編ですが、楽しんでいただけると幸いです。
つづきからどうぞ~♪
「誰も知らないある日の話」
「いいお日和ですねえ」
「そうですなあ」
熟練の庭師がていねいに丹精した京城の庭は、庭木も石も絶妙に配置され、ひとつの景勝地に数えられるほど美しい。
この日は朝からおだやかな天気にめぐまれ、市井では女たちが手際よく洗濯物を干し、港では男たちが威勢のいい声をあげて、異国の珍品や近隣の畑から運ばれた農産物を陸揚げしていた。
城に勤める文官たちは墨のかわいた竹簡を次々と運びこみまたは運び出し、武官たちは鍛錬場で剣や矛をふるい腕をみがく。料理人たちは日なたで豆をむきながら今晩の献立について話し合い、侍女たちは掃除に精を出しつつ仲の良い者どうしで寄り集まっては街で人気の歌劇やら主演の役者やら、はたまた新発売の飴菓子についてキャアキャアと盛りあがっていた。
そんな平和な昼下がり、庭の一角に据えられたこの東屋でも、京城に勤める顔見知りの者たちが集まって、ささやかな午後の一服を楽しんでいた。
持ちよった茶や菓子、漬物などをのんびりと賞味し、他愛のない話題を振りあっている。
「いや、この瓜の漬物は絶品ですのぅ。あいかわらず、奥方のお手並みはみごとですじゃ」
「なになに、ヒマな婆さんの道楽ですよ」
「あらまあ、このあいだの宴では、妻の手作りでなければ飯がすすまぬ、などとおっしゃっておられたと、侍女からうかがいましてよ」
「ほほう、これはあてられますのぅ。いつまでたっても仲のおよろしい。重畳、重畳」
「はっはっは、まいりましたなあ・・・・・・」
全体的に渋く地味な色合いが占めたお茶受けといい、そろった面子に刻まれたしわの深さと数といい、どこからどう見ても『お達者クラブの会合』である。彼らはみな若いころから孫家に仕え、年長けたいまはそれぞれの分野で高い地位についている者たちだったから、若輩の使用人などがこの場を通りかかれば「ご無礼いたしました」と平身低頭で逃げていくほどの迫力があるのだが、本人たちはあくまで気の合う旧友どうし、いつもの威厳をひっこめて、ゆったりと時を過ごしている。
熱めに淹れられた茶を楽しみながら、白ひげの重臣がしみじみとした面持ちで目を細めた。
「こうして皆で集まるのも、ずいぶん久しぶりですのぅ」
「ほんとうに。ここ数年は、なにかと表向きが騒がしゅうございましたものねえ」
老いていながらなお凛として美しい古参の女官が、しわの浮いた手を上品に口元にあて、深くうなずいた。
「まったく、某こそ、いつ冥府に呼ばれても惜しくはござらんのに・・・・・・文台さま、伯符さまと、お二方をお見送りすることになろうとは・・・・・・」
しんみりとため息をつき、頬に古傷を持つ老将軍は、瞑目して亡き主君たちに思いをはせる。
三人はすこしだけ沈黙し、そして互いをなぐさめあうように微笑んだ。
「ですが当代の仲謀さまはご聡明なお方、ご立派に孫家をささえておられますじゃ。さすがに父君兄君のご薫陶をよく受けておられる」
「ええ、ご当主になられたころはまだ幼げで、あまりにも健気でおいたわしいほどでしたけれど、すっかりご成長なされて・・・・・・さいきんは、国じゅうの若い娘たちの注目の的でしてよ」
「もとより努力を惜しまれぬ方でしたが、ご当主となられてから、いっそう文武の修練に熱心になられましたな。某も、ときおり弓の鍛錬にお供つかまつりますが、あっというまに伸びてゆかれる」
若さの特権ですな、と将軍は我がことのように嬉しげに話し、残るふたりも満足そうに何度もうなずく。
彼らにとって若き当主・孫仲謀は、単なる忠誠の対象ではなく、その誕生からずっと成長を見守ってきた大事な「若さま」であり、身分を越えて愛しんできた子どもである。その子が苦難を乗り越えて、美しくもたくましい青年に育ちつつあることが、老い疲れた心と体へのなによりの妙薬と感じられるのだった。
戦乱は終わる気配もなく、まだまだ世情は不安定だけれど、仲謀さまがいらっしゃれば揚州の未来は明るい。自分たちの後継となる若い世代も育っているし、そろそろ老骨を休める時期も近いだろうと、しわだらけの目元をほころばせる。
・・・・・・が、そのなごやかな空気もつかの間、彼らは眉をひそめた深刻な顔をよせ合った。
「こうなりますと、のこる問題は『アレ』ですかのぅ」
「ええ、『アレ』ですわねぇ。わたくしも日々案じておりますの」
「うむむ、『アレ』ばかりは、某の力及ぶところでは・・・・・・」
「なにをおっしゃるのですじゃ、将軍!『アレ』の解決なくして、我ら、安んじてお役目より退けませぬじゃ」
「その通りですわ。ご老公のおっしゃるとおり、わたくしたちの最後のご奉公と心得て、一心に努めていただかなくては」
「し、しかしですなあ・・・・・・某、どうも若きころより、そちらの道にはとんと不器用でして・・・・・・」
急にそわそわと落ち着きを無くす将軍に、重臣はぴしゃりと一喝した。
「ええい、勇猛で名高い将軍らしくもない!これは孫家の命運のかかった戦ですじゃ!」
さもありなん、と女官も重々しくつけ加える。
「いかにも、これは戦いですわ。敵前逃亡は許されません。不肖わたくし、全知全能を上げて、孫家のために勝利をつかんでみせますわ」
めらめらと背中に炎がただよいそうな友人たちの勢いに、将軍は冷や汗を浮かべながら小声で呟いた。
「む、むう・・・・・・たしかに、『アレ』は武官のあいだでもたびたび噂になっておりますが。なにしろ、仲謀さまのお心がどうにも乗り気では」
「甘いですじゃ!」
「甘いですわ」
老人とは思えない気迫のこもった声で、重臣と女官は言い切った。
「そんなことではいつまでたっても、ご後継のご誕生など望めませぬぞ!」
「仲謀さまが良き花嫁さまをお迎えになり、お跡目を継がれる赤さまをこの手にお抱きするまで、わたくしは死んでも死にきれません」
「いいお日和ですねえ」
「そうですなあ」
熟練の庭師がていねいに丹精した京城の庭は、庭木も石も絶妙に配置され、ひとつの景勝地に数えられるほど美しい。
この日は朝からおだやかな天気にめぐまれ、市井では女たちが手際よく洗濯物を干し、港では男たちが威勢のいい声をあげて、異国の珍品や近隣の畑から運ばれた農産物を陸揚げしていた。
城に勤める文官たちは墨のかわいた竹簡を次々と運びこみまたは運び出し、武官たちは鍛錬場で剣や矛をふるい腕をみがく。料理人たちは日なたで豆をむきながら今晩の献立について話し合い、侍女たちは掃除に精を出しつつ仲の良い者どうしで寄り集まっては街で人気の歌劇やら主演の役者やら、はたまた新発売の飴菓子についてキャアキャアと盛りあがっていた。
そんな平和な昼下がり、庭の一角に据えられたこの東屋でも、京城に勤める顔見知りの者たちが集まって、ささやかな午後の一服を楽しんでいた。
持ちよった茶や菓子、漬物などをのんびりと賞味し、他愛のない話題を振りあっている。
「いや、この瓜の漬物は絶品ですのぅ。あいかわらず、奥方のお手並みはみごとですじゃ」
「なになに、ヒマな婆さんの道楽ですよ」
「あらまあ、このあいだの宴では、妻の手作りでなければ飯がすすまぬ、などとおっしゃっておられたと、侍女からうかがいましてよ」
「ほほう、これはあてられますのぅ。いつまでたっても仲のおよろしい。重畳、重畳」
「はっはっは、まいりましたなあ・・・・・・」
全体的に渋く地味な色合いが占めたお茶受けといい、そろった面子に刻まれたしわの深さと数といい、どこからどう見ても『お達者クラブの会合』である。彼らはみな若いころから孫家に仕え、年長けたいまはそれぞれの分野で高い地位についている者たちだったから、若輩の使用人などがこの場を通りかかれば「ご無礼いたしました」と平身低頭で逃げていくほどの迫力があるのだが、本人たちはあくまで気の合う旧友どうし、いつもの威厳をひっこめて、ゆったりと時を過ごしている。
熱めに淹れられた茶を楽しみながら、白ひげの重臣がしみじみとした面持ちで目を細めた。
「こうして皆で集まるのも、ずいぶん久しぶりですのぅ」
「ほんとうに。ここ数年は、なにかと表向きが騒がしゅうございましたものねえ」
老いていながらなお凛として美しい古参の女官が、しわの浮いた手を上品に口元にあて、深くうなずいた。
「まったく、某こそ、いつ冥府に呼ばれても惜しくはござらんのに・・・・・・文台さま、伯符さまと、お二方をお見送りすることになろうとは・・・・・・」
しんみりとため息をつき、頬に古傷を持つ老将軍は、瞑目して亡き主君たちに思いをはせる。
三人はすこしだけ沈黙し、そして互いをなぐさめあうように微笑んだ。
「ですが当代の仲謀さまはご聡明なお方、ご立派に孫家をささえておられますじゃ。さすがに父君兄君のご薫陶をよく受けておられる」
「ええ、ご当主になられたころはまだ幼げで、あまりにも健気でおいたわしいほどでしたけれど、すっかりご成長なされて・・・・・・さいきんは、国じゅうの若い娘たちの注目の的でしてよ」
「もとより努力を惜しまれぬ方でしたが、ご当主となられてから、いっそう文武の修練に熱心になられましたな。某も、ときおり弓の鍛錬にお供つかまつりますが、あっというまに伸びてゆかれる」
若さの特権ですな、と将軍は我がことのように嬉しげに話し、残るふたりも満足そうに何度もうなずく。
彼らにとって若き当主・孫仲謀は、単なる忠誠の対象ではなく、その誕生からずっと成長を見守ってきた大事な「若さま」であり、身分を越えて愛しんできた子どもである。その子が苦難を乗り越えて、美しくもたくましい青年に育ちつつあることが、老い疲れた心と体へのなによりの妙薬と感じられるのだった。
戦乱は終わる気配もなく、まだまだ世情は不安定だけれど、仲謀さまがいらっしゃれば揚州の未来は明るい。自分たちの後継となる若い世代も育っているし、そろそろ老骨を休める時期も近いだろうと、しわだらけの目元をほころばせる。
・・・・・・が、そのなごやかな空気もつかの間、彼らは眉をひそめた深刻な顔をよせ合った。
「こうなりますと、のこる問題は『アレ』ですかのぅ」
「ええ、『アレ』ですわねぇ。わたくしも日々案じておりますの」
「うむむ、『アレ』ばかりは、某の力及ぶところでは・・・・・・」
「なにをおっしゃるのですじゃ、将軍!『アレ』の解決なくして、我ら、安んじてお役目より退けませぬじゃ」
「その通りですわ。ご老公のおっしゃるとおり、わたくしたちの最後のご奉公と心得て、一心に努めていただかなくては」
「し、しかしですなあ・・・・・・某、どうも若きころより、そちらの道にはとんと不器用でして・・・・・・」
急にそわそわと落ち着きを無くす将軍に、重臣はぴしゃりと一喝した。
「ええい、勇猛で名高い将軍らしくもない!これは孫家の命運のかかった戦ですじゃ!」
さもありなん、と女官も重々しくつけ加える。
「いかにも、これは戦いですわ。敵前逃亡は許されません。不肖わたくし、全知全能を上げて、孫家のために勝利をつかんでみせますわ」
めらめらと背中に炎がただよいそうな友人たちの勢いに、将軍は冷や汗を浮かべながら小声で呟いた。
「む、むう・・・・・・たしかに、『アレ』は武官のあいだでもたびたび噂になっておりますが。なにしろ、仲謀さまのお心がどうにも乗り気では」
「甘いですじゃ!」
「甘いですわ」
老人とは思えない気迫のこもった声で、重臣と女官は言い切った。
「そんなことではいつまでたっても、ご後継のご誕生など望めませぬぞ!」
「仲謀さまが良き花嫁さまをお迎えになり、お跡目を継がれる赤さまをこの手にお抱きするまで、わたくしは死んでも死にきれません」
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